2014年6月30日月曜日

今年もお配りします!

皆様こんにちは。製作部Hです。

東京国際ブックフェア2014開催まで、あと2日!
弊社ブックフェア実行委員会の委員長は、ブース設営の立ち合いのため、本日より会場入りしています。


さて、今回は、先日社内で行いました、とある作業の様子をリポートしたいと思います。

こちら。



何をしているか、お分かりでしょうか?





正解は、ご存じの方はお馴染みの(?)、「浪花ことばせんべい」袋詰め作業です!

2010年より、弊社ブースにてお買い上げいただいた方へのプレゼントとしてご用意しておりますこのおせんべい、大阪は阿倍野区にあります「はやし製菓本舗」さんでつくっていただいています。

この日、できたてのおせんべいが納品され、7名で袋詰め作業を行いました。
それぞれ役割分担し、流れ作業で詰めていきます。

しおりを二つ折りにする
   ↓
おせんべい(密封包装済)としおりをセットにする
   ↓
おせんべいとしおりをPP袋に入れる
   ↓
PP袋にシールで封をする


慣れない作業でもたもたしていると、あっという間に次工程待ちのおせんべいが積み上げられていきます……!



それでも、甘い匂いに包まれながら黙々と作業を続けて、予定より早めに終わらせることができました。


はやし製菓本舗さんの「浪花ことばせんべい」は、一枚一枚丁寧に焼かれたおせんべいに、「おいでやす」「きずかいない」「いけず」といった「浪花ことば」が焼きつけられています。
東京国際ブックフェア会場では、この浪花ことばせんべいと、特別に弊社の社名を焼きつけていただいたものを2枚セットにしてお配りしています。当会場限定の、かなりレアな商品です!



甘すぎない素朴なお味も保証付き。ぜひ創元社ブースにお越しいただき、お気に入りの書籍と一緒にゲットしていただければと思います。


なお、「浪花ことばせんべい」は、こちらの書籍でもご紹介しております!
こだわりの大阪名物満載! ブックフェア会場でも販売しています。


『新版 大阪名物』 
井上理津子、団田芳子著 
定価(本体1,300円+税) 四六判 並製 160頁



それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。



2014年6月27日金曜日

歴史学はどうあるべきか

こんにちは、編集部のDです。おもに歴史本や鉄道本を担当しています。また、今回は弊社内のブックフェア実行委員会の委員長を務めています。

本ブログでは社員の「こだわりの一冊」をインタビュー形式でまとめていますが、インタビューを受けて要領よく答えるのは苦手なので、自分でまとめました。

結果、自分でもおそれていたとおり、長くなってしまいました。ブログで読むにはしんどいスタイルですが、根気のある方はお付き合いくだされば幸いです。


http://www.sogensha.co.jp/booklist.php?act=details&ISBN_5=20288

『私と西洋史研究――歴史家の役割』
川北稔 著/玉木俊明 聞き手
定価(本体2,500円+税) 四六判上製・272頁 2010年4月刊行

〈内容紹介〉
西洋史研究の碩学として知られる著者の個人研究自伝。計量経済史および生活史(社会史)の開拓、世界システム論の紹介・考察など数々の画期的業績を築きあげた著者の研究スタンスや思考を詳説するとともに、学界研究動向の推移や位置づけ、歴史研究の意義とあり方、歴史家の役割など、歴史を学ぶうえで必須の観点を対談形式で平易に説き明かす。研究の背景や意味を解説したコラム、詳細な脚注入り。

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●本書を選んだ理由

創元社の歴史の本というと、ビジュアルもの、翻訳もののイメージがあると思われがちですが、日本人研究者による書き下ろしの専門書ないし啓蒙書もあることを知っていただきたいと思い、その代表として本書を選びました。

あとでも申し上げるつもりですが、一昨年から刊行している「創元世界史ライブラリー」という叢書は、本書の編集を契機として生まれました。

また、著者の川北稔先生は学生時代にイギリス史を勉強していた私にとって雲の上の存在であったこと、また私事で恐縮ですが、本書編集中に父が亡くなったこともあって、装丁を見るたびにいろいろな思い出がよぎる一冊でもあります。


●川北史学のエッセンス

本書では川北先生の研究者としての歩みを辿りますが、その歩みは戦後日本の西洋史の歩みとも重なります。少し専門的な話になりますが、まだ農村史、土地制度史学が盛んだった時代、川北先生はまず、ほとんど独力で計量経済史の道を切り拓かれました。

本書あとがきで玉木先生が触れられているように、本場イギリスを越えるような業績を1960年代、20代なかばで出されたのです。驚くべき話ですね。

これだけでも瞠目すべきことですが、続いて生活史、社会史を開拓され、その成果は1970年代に河出書房から出た「生活の世界歴史」として結実しました。これは大変面白いシリーズで、私も学生時代にその文庫本を何冊も読みました。

このシリーズや、その前に出た『洒落者たちのイギリス史』は専門家だけを対象とした本ではなく、イギリス史や世界史に関心のある一般読者を獲得したといいます。川北先生はここでもいち早く、「リーダブルな書物による研究成果の報告」という新しい手法をとられたのでした。

さらに80年代になると、ウォーラーステインの世界システム論をいち早く日本に紹介され、日本における世界システム論の第一人者として、西洋史の枠を超えて大きな影響を及ぼしました。一国史にとどまらない、他の国・地域との関係を重視する研究スタイルを提唱されたわけで、今日の「帝国研究」の礎を築いたといっても過言ではないと思います。

とにかくその業績は圧倒的で、すべてを一人でやったとは信じられないくらいです。

そうした質・量ともに圧倒的な業績はどのようにして生み出されたのか、画期的な視点はいかにして得られたのか、研究者としていつも何を心がけていたのか、歴史学はどうあるべきか……本書では「川北史学」のエッセンスが余すところなく伝えられています。これから西洋史を学ぼうという人にとって必読だと思います。

それから本書の大部分は、玉木俊明先生(京都産業大学教授)との対談を加筆修正してまとめられていますが、川北先生による書き下ろしのコラムが3本あります。

これは当初予定にはなく、私が無理を言って書いていただいたのですが、どのコラムも非常に刺激的で、読み応え十分です。あまりに刺激的で、どの部分がそうなのかは言えませんが、まずはここを読んでいただいてもいいくらいです。


●昔の研究風景

本書にはまた、昔の研究風景がよく出てきます。インターネットが普及するよりはるか前の時代、外国の文献や情報を手に入れるのも一苦労で、コピー機もなく、貴重な文献を手書きで写していたそうです。研究者にしても、いまではちょっと考えられないくらい個性豊かな教授たちがたくさんいて、独特の世界がありました。

いまとはまったく異なる環境下でどのように研究していたのか。西洋史研究にかぎらず、興味深いエピソードがたくさんあります。昔のほうが良かったと言うつもりはありませんが、便利になった一方で失われたものもあるような気がします。

「そんな専門的な話はわからない、昔のこともわからない」という人もいるでしょうが、そうならないように、本書にはたくさんの脚注を付けました。戦後西洋史に大きな影響を与えてきた錚々たる面々や時代背景がフォローされており、この脚注だけを眺めていても面白いと思います。

刊行後、面識のある先生から「よく調べたね。私たちにとっては懐かしく、いまの学生にとっては親切だね」と言われました。ほとんどは玉木先生が作成してくださったのですがね。


●装丁のこと

本書の編集作業では、後世に伝えるべき本として、あれやこれやと中身にこだわりましたが、見た目にもこだわりました。川北先生が学生時代に使われていた研究ノートをお借りして、それをそのまま表紙にし、その上にやや表紙が透けて見えるカバー(ジャケット)を巻くことにしました。

当初はノート表紙を前面に出す予定でしたが、川北先生は「きれいなものじゃないし、ちょっと品がないんじゃ……」と難色を示されたので、表紙がかろうじて透ける特殊な紙を用いました。結果的にとても品のある仕上がりになったと思います。

大扉(「はじめに」の前にある書名のあるページ)にもこだわっていて、フールスカップという特殊な紙を用いました。シャーロック・ホームズ・シリーズを読んだことのある人はご存じだと思いますが、昔、余分なインクを吸い取るのに使われていた紙で、用紙全体に漉き目が走っていて、用紙の場所によってはフールスカップ(道化師帽)の漉かしが出てきます。

つまり、道化師帽の漉かしがある本とそうでない本があるわけです。また、フールスカップはイギリスにルーツをもつ紙ないし紙の規格ですから、イギリス史を研究されてきた川北先生にはぴったりです。

以上は装丁家の濱崎氏(今年、装幀コンクールで文部科学大臣賞を受賞)のアイデアで、本書の位置づけや私の思いの強さを汲み取ってくれたのだと思います。


●誰かが面白いヨーロッパ史を書かなければならない

本書のなかでは、いまの西洋史研究への懸念が何度も吐露されます。西洋史研究は時代が進むにつれて細分化され、精緻になってきました。いまや大学院生が在外研究をすることは珍しくなく、各国の文書館に出入りして一次資料をベースにした研究が当たり前になっています。

こうして研究の質が上がることは素晴らしいことですが、一方で歴史好きの一般の人たち、非専門家にとっては親しみにくいものとなっているきらいもあります。西洋史研究者でさえ、専門を異にすると評価に困り、著者と一部の人たちにしかその内容を理解できないような状況も生じています。

だから、川北先生は言います。「誰かが非常に面白いヨーロッパを書かなければならない」。そうしないと「日本の西洋史研究者は、国際的にも、あるいは国内的にも生き延びていけないのではないか」。

このくだりを横で聞いた時、私は衝撃を受けました。そして、その後何度も自問自答しました。専門家でないけれど、歴史に関心のある、知的好奇心が旺盛な人たちの期待に応えられているのだろうか。編集者として本当にそういう本を作ろうとしているだろうか。自分が専門に関係なく、歴史の本を楽しんでいた頃を思い出しました。

そして冒頭でふれたように、このことを契機として「創元世界史ライブラリー」という新しい叢書を作りました。刊行されたのはまだ3点ですが、各巻の最終ページ広告には次のように書いてあります。

「世界を知る、日本を知る、人間を知る――ベーシックな研究テーマからこれまで取り上げられなかったテーマまで、専門研究の枠組みや研究手法、ジャンルの垣根を越えて、歴史学の最前線、面白さを平易な言葉とビジュアルで伝える」

文言は私が書いたもので、川北先生がこのようにおっしゃったわけではありませんが、本書を編集していなければ、このシリーズは生まれなかったかもしれません。そういう意味でも思い出深い一冊であり、これから西洋史を勉強しようという方にぜひとも読んでいただきたい一冊です。

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ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。どうも思いが先走って、簡潔に伝えることができませんでした。ご容赦願います。

本書や本書のおかげで生まれたライブラリーなどが一人でも多くの方に読まれ、そのなかから歴史研究を志す方が出てくることを祈りつつ、編集者として精進をかさねたいと思います。


2014年6月20日金曜日

伝説の書物、編集秘話

みなさま、こんにちは。編集部Nです。

創元社社員の「こだわりの一冊」第4弾!ということで、今回は創元社編集部W部長にインタビューしてまいりました。

選ばれた一冊はこちら!


『赤の書 THE RED BOOK』
C・G・ユング著/ソヌ・シャムダサーニ編/河合俊雄監訳/田中康裕、高月玲子、猪股剛訳
定価(本体40,000円+税) A3判変形上製 456頁 2010年6月刊行

〈内容紹介〉
フロイトとともに、20世紀の心理学に大きな足跡を残したC・G・ユング。本書は、彼が16年余にわたって私的な日記として書き綴り、死後、半世紀ものあいだ非公開のまま眠っていた伝説の書物である。そこには、ユング思想の中核をなす概念の萌芽が、ほぼすべて網羅されている。美しいカリグラフィーによる文面、強烈なヴィジョンの体験を極彩色の緻密な構成で描きだした134点もの絵の数々。ここに描かれているのは、人間の無意識の深遠なる未踏の世界そのものである。


世界各国から注目を集めた伝説の書物。その日本語版の編集を一手に引き受けたW部長が語る編集秘話をたっぷりとお聞きください。

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――『赤の書』を選ばれた理由は何でしょうか?

なんと言っても、20世紀の代表的な知識人の一人であるユングの思想の中核部分に触れることができる、一次資料だからです。
また、企画から刊行まで10年ほどかかっていて、私にはとても思い入れの深い本でもあります。

――随分タイトなスケジュールだったとお聞きしています。

これまで作った本の中でいちばんスケジュールがきつかった本で、最後の追い込みの1ヵ月は、会社近くのホテルに泊まり込んで家に帰れませんでした。でも、そのぶん、やりがいもありましたね。本作りが終わってから社内の人に、「よく生きて帰ってきたね」と言われて、孤独な作業からようやく解放されて現実の世界に戻ってきたんだ、という実感が湧いたのを思い出します。

――「生きて帰ってきた」とはすごい表現ですね。

最後の1ヵ月は夜通し仕事をして、朝の5時か6時ごろに会社近くのホテルへ戻り、11時ごろまで仮眠をとって再び出社……という生活を繰り返していました。

――……(絶句)

だんだんとワーキングハイのような状態になっていったんでしょうね。


――こだわりのポイントを教えてください。

原書が半世紀もトランクの中で外気に触れずに保存されていただけあって、絵は鮮やかな色合いがそのまま残っていて、圧倒的な迫力があります。カラー図版の印刷は、美術印刷にたけたイタリアでの印刷が各国語版にも義務づけられていて、とても美しいものです。

――W部長のお気に入りの図版はどれですか?

図版131の「木」のシルエットや135「世界卵」といった絵に魅かれます。それから子どものころ繰り返し見ていた夢について、この本を読んで「そういうことだったのか」と合点がいくことがたくさんありました。

「木」

「世界卵」


編集作業では、英語版とドイツ語版の両方のテキストを照合して、それぞれの間違いを訳者に修正していただくなど、発行時点では、日本語版が最も学術的に正しい内容のものだったと思います。本文は、翻訳のプロにも目を通してもらい、さらに監訳者が全文に目を通して手を入れるなど、二重三重にチェックしていただいたので、かなり読みやすい文章になっていると思います。

――本当にたくさんの人の力添えがあって出来た本なのですね。

大量のゲラが机の両側に山積み状態で、何人もの人にチェックをお願いしていました。ただ、最終的に責任を取るのは自分一人ですので、そういう意味では孤独な作業でしたね。大変な分量でしたけれど、今一気にやってしまわないとできないと思いました。(原書が刊行されてから)約半年間で訳してくださった先生方も大変だったと思います。最終原稿が届いてからほとんど1ヵ月間で仕上げまでもっていきました。訳者の先生方との関係、また組版の方との関係が出来ていないとできない企画だったと思います。人に恵まれていた企画、勢いに守られていた企画だったと言えるでしょうね。


――どういう人に手に取ってほしいですか?

人間の「こころ」の深みに関心のある方に手にとっていただきたいと思います。「私とは何者か」「魂とは何か」と問い続けている人たちに。

私たちはふだん、日々の忙しさに追われてほとんど意識することはありませんが、人間のこころの奥深くに潜む無意識の世界は、想像を絶する深みと豊かさをもっているのだと思います。その、深い世界の奥底まで降りて、ふたたび現実世界へと戻ってきたユングは、こころの奥底で経験したものやヴィジョンを《言葉》と《絵》で描きました。それが、この本です。ここに描かれているヴィジョンが、個人の経験をはるかに超えたものであることは、おそらく多くの人たちが認めるところだろうと思います。ではそれは、どこから来るものなのか。ぜひ、そうした根源的な問いかけを自らの問題として、ユングと共に考えつづけていただければと思います。


――最後に、読者の方へひとことお願いします。

この本は大型本で高価でもありますので、読書に適した形である、とは言いがたいかもしれません。今年の8月に、この本のテキスト部分だけを取り出したA5判の『テキスト版』が刊行されます。興味を持たれた方は、ぜひ、そちらをお読みいただいて、ユングと体験を共有してくださればと思います。そして、さらにこの大判の複写版も手に取って見ていただければ、とても嬉しいです。


『赤の書 テキスト版』
C・G・ユング著/ソヌ・シャムダサーニ編/河合俊雄監訳/河合俊雄、田中康裕、高月玲子、猪股剛訳
定価(本体4,500円+税) A5判並製 688頁 2014年8月刊行


――ありがとうございました。貴重なお話を聞かせていただきました。

でもあまりにも大変だったから、もう一度この本を読み返す気にはなれなかったのよ。今でもこの本を見ると「もういい」と思うんです。「こだわりの一冊」というよりも「もう十分な一冊」ですね。

――(笑笑)

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いかがでしたでしょうか。訳者の先生方と編集者、そしてデザイナーさんや印刷所の方々など、大勢の人たちが心血を注いで作り上げた、圧倒的な存在感を放つ希代の書。ぜひ一度、お手に取ってご覧いただければ幸いです。

今回は以上で終わらせていただきます。
お読みいただき、ありがとうございました。
次回の更新をお楽しみに!



2014年6月13日金曜日

招待券をお送りします


こんにちは。

営業部のTです。

6月も半ばを過ぎ、徐々に暑くなってまいりました。みなさま如何お過ごしでしょう。

いよいよ東京国際ブックフェア2014の開催日が近づき、私は何だか浮き足立った気分で毎日を過ごしています。

開催日は7/2(水)~7/5(土)。一般公開は7/4().5()です。
まだまだやることは山積みですが、もう開催まで一カ月もありません。委員一同、徐々に燃えてまいりました。

そんな間近に迫った東京国際ブックフェアですが、弊社の何よりの望みは、みなさまにお越しいただき、楽しんでもらうことです。

そこで、創元社がみなさまを、ブックフェアへご招待申し上げます。

ご興味のある方は、下記メールアドレスへご連絡ください。招待券をお送りいたします。
個人情報の取扱に関しては、こちらをご覧ください。


メールには以下の事項をご記入いただけますでしょうか。

1.お名前
2.ご住所
3.郵便番号
4.必要枚数

                                                     
 
招待券はこんな感じです。
  

 
今年は過去最多の1500社が出展予定とのこと。見逃せません……

  

招待券をお持ちの方は無料でご入場いただけますが、お持ちでない方は1200円の入場券が必要となります。

いらっしゃる予定のある方、迷っている方、どなたでも喜んでご招待させていただきますので、お気軽にご連絡ください。


それでは、皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

2014年6月10日火曜日

小さく生んで大きく育てる

みなさま、こんにちは。営業部Gです。

創元社社員のおすすめの本、イチオシの本をご紹介する連載「こだわりの一冊」、第3回です。今回は創元社営業部のレジェンド! K部長の「こだわりの一冊」をご紹介します。

選ばれた1冊はこちら!


http://www.sogensha.co.jp/booklist.php?act=details&ISBN_5=11257

『プロカウンセラーの聞く技術』 

東山紘久著
定価(本体1,400円+税) 四六判並製 216頁 2000年9月刊行


〔内容紹介〕
「沈黙は金、雄弁は銀」「一度語る前に二度聞け」など、昔からしゃべることよりも聞くことの大切さが強調される。もちろん「話す」ことも人間関係の上で大きな影響を与えるが、本当に人の話を「聞く」ことができると、人間関係は驚くほどよくなる。本書は、「聞く」ことのプロであるカウンセラーが、「聞き上手」になるための極意を、実例をふくめてわかりやすく説いた1冊。
 


そもそも心理学の本だった「聞く技術」が、ビジネス書売り場で大ブレイクしたきっかけとは? K営業部長の語る、大ヒット秘話です。


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――まずは、この本を選んだ理由をお聞かせください。


いろいろな意味で、とても思い出深い一冊だからですね。


──心理学書では異例の38万部の大ヒットですね。どういったことがきっかけでブレイクしだしたんでしょうか?


きっかけのひとつとして、思い出深いエピソードがあります。発売して4ヶ月ほどの2001年の1月、『プロカウンセラーの聞く技術』がだんだん売れだした頃、取次(本を書店さんに卸す問屋さんのこと)の倉庫に行った際に、なじみの書店さんと『聞く技術』の話になったときのことです。

「これ、心理の本やけど、ビジネスや話題書のコーナーで、平積み・面陳ですごい売れてるんです。追加注文がどんどん来てて、取次さんの倉庫でもこうやって、店売(倉庫内の直販コーナーのこと。取次を訪れた書店さんがここで商品を目利きして仕入れる)で積み上げてもらってるんですよ」

と、話していたら、その書店さんが、

「じゃあ、うちでもやってみるわ」って。
「なんぼいります?」
「50冊」

え、50冊もどうするんだろうと思った。
そしたら、その書店さんの店の前に、雑誌のラックがあってね。そのラックの雑誌全部はずして、そこに全部『聞く技術』を並べるっていう、すごい集中販売をしてくれた。


──あ、写真みたことあります。立ててずらーっと。



そう! それをいっぺんやってみたら、一週間ほどで書店さんから電話がかかってきて、

「いや、売れてるよ! 一週間ですごい売れ行きや」って。

それで、すぐに追加入れて。このあたりからかな、急速に広がっていったのは。



雑誌ラックに一面の『聞く技術』!

同時進行で、他の書店さんからも、ビジネス書で平積みにしてよく売れた、という情報が入りだして、これは売れる、さらに売っていこう、ということになった。それで、編集と営業でいっしょになって、帯の文句を考えたり、チラシのアイディアを出し合ったり。夜遅くまで額を寄せ合って知恵をしぼった。その当時のデザイナーさんも巻きこんで、今までにないようなインパクトの強いチラシを作ったり。


「聞く技術」ヒットの大きな起爆剤となった書店向けチラシ


──チラシ、印象的でしたね、ファイヤー!(上図参照)みたいなのとか。


押しの強いね(笑)。こういったチラシをくりかえし書店さんにFAXしたり、帯やPOPを何種類も作って、いろんなジャンルの売り場に持って行けるようにしたり、ありとあらゆる工夫をした。デザイナーも、編集も、営業も、一丸となってがんばっていた。

帯デザインの変遷
当時は、3種類ほどの帯の本が書店に同時に並ぶという状況でした。
1番最初は緑色。すっかり定番となった黄色とは、また雰囲気が違っています。



あそこまで、部署や役割を越えて、話しながら、一体化して、みんなでやったっていうのが、『プロカウンセラーの聞く技術』がものすごく売れた要因のひとつなんじゃないかと思っています。もちろん、本そのものも、一般的で読みやすく、説得力もあった。そういう商品としての強さにくわえて、部署の垣根を越えた、販売努力。

ダーンとたくさん作って、ああ失敗やったとか、あるいは広告ガツーンと打って成功した、とかもあるけれど、そういうのは水物で、一発勝負。逆に『プロカウンセラーの聞く技術』は、積み重ねて積み重ねて、「小さく生んで大きく育てる」っていうのを実践できた本だと思っています。一番、営業の王道というか、正道というか、そういう売り方が出来たんじゃないかと。そういう意味では、今までで最高の本なんじゃないかな。とても思い出深い一冊です。

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『プロカウンセラーの聞く技術』は現在38万部。インタビューのなかの「小さく生んで、大きく育てる」「営業の正道」といった言葉が、同じ営業の人間として、心に残りました。

本の内容も、本当にわかりやすく、「聞く」というコミュニケーションにおいて、実はもっとも大切な行為の極意を伝えてくれる名著です。 姉妹編『プロカウンセラーの夢分析』『プロカウンセラーのコミュニケーション術』『プロカウンセラーが読み解く女と男の心模様』も大好評発売中です。
是非一度、お手にとってみてください。

今回は以上で終わらせていただきます。
お読みいただきありがとうございました。

2014年6月3日火曜日

心理学書も出版しています。

皆様こんにちは。製作部Hです。

創元社社員のおすすめの本、イチオシの本をご紹介する「こだわりの一冊」のコーナーです。
前回の社長に続きまして、今回は編集部K課長の「こだわりの一冊」をご紹介します。


選ばれた一冊はこちら!


ベティー・キッチナー、アンソニー・ジョーム著/メンタルヘルス・ファーストエイド・ジャパン編訳

定価(本体2000円+税) A5判並製 112頁 2012年11月刊行

[内容紹介]
うつ病、不安障害、精神病性障害、物質(アルコール・薬物)関連障害といった主要なメンタルヘルスの問題ごとに症状や原因などの基礎情報をコンパクトに解説し、いざというときの対応を「り・は・あ・さ・る」の5つのステップに分けて伝授する。米英ほか多くの国で使われている、オーストラリアのプライマリ・ケア国家プロジェクトのテキスト。心理・医療・保健・福祉など、メンタルヘルスにかかわる職業の方は必携です。



本書の担当編集者でもあるK課長に、こだわりのポイントを聞いてみました!


――この本を選んだ理由はなんですか?

創元社と言えば、最近は『世界で一番美しい元素図鑑』とか、『戦後史の正体』とか、図鑑や歴史・文化、ビジネスなどのジャンルで一般の方々に認知されていると思うのですが、実は心理学や精神医学の本もたくさん出版しているということを、この機会に多くの人に知ってもらえたらと思いました。


――おすすめのポイント、また編集者としてのこだわりのポイントを教えてください。

この本は、こころに不調や病を抱える人たちに「いざ」という事態が生じたときに、周りの人はどう対応すればよいのかということを非常にコンパクトにまとめています。もともと、そうした「こころの応急処置」に関する研究や教育が盛んなオーストラリアで出版された本ですが、日本の読者が使いやすいように、日本の実情に合わせた編集を施しています。知っておくべき知識や対応のポイントが箇条書きになっていたり、表にまとめられたりしているので、とてもわかりやすいと思います。また、本文は2色刷りにして、見やすくしました。


――どういう人に読んでほしいですか?

こころに不調を抱える人の家族や友人・知人はもちろん、心理、医療、福祉などメンタルヘルスに関わる職業に就いている人には、ぜひ手に取ってほしいと思います。この本では、応急処置の基本を「り・は・あ・さ・る」と覚えられるようまとめていますが、知っておいて損はないと思います。


――ありがとうございました。最後に読者の皆様へひとことお願いします。

この本で扱っているのは、うつ病、不安障害、精神病性障害、物質関連障害といった、メンタルヘルスの主要な問題ばかりですが、それぞれについて、より詳しく学びたいという人のための専門書も、創元社では数多く取りそろえていますし、この本以外にも、一般の方におすすめしたい心理学の本がたくさんあります。ぜひ「心理学書の創元社」という一面も知っていただけたらと思います。





第1回目のブログでもご紹介しましたように、弊社、非常にバラエティに富んだジャンルの書籍を出版しております。
図鑑や歴史関係の書籍と心理学書が一堂に会するのも、ブックフェアならでは。会場で、創元社のさまざまな「顔」に出会っていただければ幸いです。

それでは、今回は以上で終わらせていただきます。

お読みいただきありがとうございました。